「具沢山の味噌汁とご飯、香の物があれば、ふだんの食事は十分」と説いた土井善晴氏の著書『一汁一菜でよいという提案』は、食事作りに悩む人々を中心に反響を呼び、大ベストセラーに。そこに至るまでの土井氏の半生や思想をまとめたのが本書だ。
「初めてお会いした際、『料理をなめてはいけない』とおっしゃっていたことが印象的でした。料理と生き方をリンクさせて考えてきた土井さんに、なぜ一汁一菜を取り入れると暮らしが豊かになるのか、料理人生を通して伝えていただきました」(担当編集者の足立真穂さん)
20代で渡仏し、世界的に有名な料理人、ポール・ボキューズの兄弟子のそばでフランス料理の真髄に触れた。帰国後は味吉兆の中谷文雄氏の元で学び、休日には運転手を務め、車の中でも料理の話を聞いた。そうした修業や、人気料理研究家だった父・土井勝氏の跡を継ぎ、もがきながら料理研究家の道を歩んできた様子がいきいきとした筆致で描かれる。戦後の食文化を紐解き、家庭料理は一汁一菜が理にかなっていると至る過程は発見の連続だ。
「土井さんは『料理に失敗はない。一汁一菜で幸せになる人が増えるとしたら、それほどうれしいことはない』と常々おっしゃっています。その純粋な思いや姿勢こそが、読者の共感を呼ぶのでしょう」(足立さん)
2022年5月発売。初版1万8000部。現在9刷5万8000部(電子含む)
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