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繁華街では理想の料理に近づけない 和食の匠が目指す「美しい味」:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 宮崎県延岡市の裏通りにある料理屋。「きたうら善漁。」と書いて、「ぜんりょうまる」と読む。全国から食通が訪れる予約困難な店として知られるが、メニューの口上書きには「なんてこと無いただの料理屋、旨(うま)いものは作りません」。店主の吉田善兵衛さん(45)は今春、山奥に新たな店を作り、現代人が忘れかけている「おいしさの先にある美しい味」にお客さんを誘いたいという。(石川雅彦)

  ◇

 自分は、お客さんに喜んでいただこうと思って料理しているわけではないんです。本当の味、自然の味を届けたい。個性や季節感などをわざわざ表現しようとしなくても、当たり前のことをしていれば、「美しい味」は自然ににじみ出て、お客さんがわかってくれる。自分は、ただ当たり前に「理(ことわり)を料(はか)る」だけなんですよ。

 《「善漁。」を開いて14年。海外の雑誌に取り上げられたり、農林水産省から「料理マスターズ」に選ばれたり、有名人が遠方から訪れたり。だが注目を浴びるにつれ、だんだん疑問がふくらんでいった》

 生意気な言い方ですが、「うまい」とか「おいしい」とかは、個人差がある。でも自分は「真の味」「自然の味」を届けたい。そして、自然や人に感謝して、「美味(おい)しくいただいてもらえる空間」を作りたい。「善漁。」の料理が評価されているとしたら、宮崎の食材、生産者、そして宮崎の自然が素晴らしいからです。各人の過去の味覚をそぎ落とし、私自身が思う「美味(うま)い」を、その味を忘れかけているお客さんの舌に蘇(よみがえ)らせたい。美味い、美味くないをさておいて来てくれるお客さんと勝負したい。

 《手を加えない食のすばらしさを教えたのは両親だった。延岡市北浦町で父親がとってきた魚、近所の農家がお裾分けしてくれた野菜で、ほぼ自給自足の生活。「今から思えば、それしか食べるものがなかった」と振り返るが、自身も毎日釣りに出掛け、魚を料理することが人の喜びになり、自分の喜びになることを学んだ》

 繁華街に店があると、私の理想の料理になかなか近づけないんです。どうしても、採算を考えながら、料理や器に工夫をほどこし、お客さんを喜ばそうとしてしまいます。

 《かつては技巧的なのが料理…

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