料理を毎日作ることがしんどいからといって、料理が嫌い、苦手というわけではないかもしれません(写真:mits/PIXTA)
コロナ禍で家庭での自炊頻度が高まった一方で、「自炊疲れ」の感覚も広く認知された近年。さらにこの春からは出社や対面の仕事が増加傾向で、仕事をしながら日々の炊事をどう繰り回すか、奮闘する人もますます増えています。
本稿では、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』の著者であり、著名料理家や全国の台所を取材してきた人気フードライター白央篤司氏が、「料理は嫌いじゃないけど、しんどい日も結構ある……」という人に向けて、心もお腹も温かく満たすヒントを伝えます。
「料理がつらい」のは、料理が嫌い・苦手だからじゃない
料理を毎日するということは、自分の調子や機嫌と毎日向き合うということだ。昨日は難なくできたことが、今日はどうにも面倒くさい。ああ、人間にはなんで気持ちに波やムラがあるのだろう?
心に波のない穏やかな凪の日、私はじゃがいもや里芋の皮をむくことがちっとも面倒ではない。もやしのひげ根を取ることも、にんじんを細切りにしてキャロットラペを作ることも、ごぼうの繊細なささがきを作って牛肉の柳川にすることも、へいちゃらだ。
しかしひとたび荒波が起これば「食事の支度をしなくてはならない」という事実からが重い。こういうとき一般社会では「波乗り禁止」と誰かが判断してくれて「じゃあしょうがないよね」となるのだが、家事としての料理だとそうもいかない。
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