某月某日、とあるムッシュが言った、なんでツージーはそんなに料理が上手なの~、とね。
そこで父ちゃんはこう言い返したのだった。
「それは、ぼくがお金持ちじゃないからだ」
すると、ムッシュも負けじとこう言い返してきたのであーる。
「ぼくだって、金持ちじゃないぞ。でも、料理は出来ない」
ぼくは笑った。ムッシュも笑った。
「君は、じゃあ、どうやって美味しいものを食べるんだね」
すると、ムッシュは小首をひねって、こう続けたのであった。
「そりゃあ、いろいろと調べて、安くて美味い店を探すんだ」
「その通り、しかし、それは簡単なことじゃないだろ。安くて美味しいものをみんなが探している。そして、そういう店は予約がとれないし、予約をとらない場合、並ばないとならない。だよね?」
「確かに、美味しくて安い店は並ばないとならない」
「ぼくは、それが苦手なんだよ。長い列の一番後ろに立つのが苦手だ」
「ああ、たしかに」
「そもそも、安くて美味しい店はうちの周りにはない。中心地の賑やかな場所にあって、並ばないとならない。30分とか、1時間。しかも、いっつも満席で、なかなかありつけないんだ。違うかね?」
ムッシュは、その通り、と同意したのだった。
「だから、大金持ちじゃなく、しかも、行列の出来る店に並ぶのが苦手なぼくは、作るしかなかったんだよ。世界一ではないが、世界二位くらいの餃子とか、三位くらいのステーキとか、四位くらいのスパゲッティを作れるようなオヤジになりたいと、ひそかに目指してきた」
「なるほど」
「高級レストランには行けない。行列の出来る店には行けない。ならば、自宅を美味しいレストランにしちゃえばいいじゃないかって、だよね? 家飯が最高なら、わざわざお金を使う必要もないじゃないか。ある日、ぼくは世界一ではないけれど、それなりに美味しいものが出来るオヤジになったんだ。自宅でレストラン並みの料理が出来たら、最高だとは思わないか? お金がかからないし、並ぶ必要もない。しかも、美味いんだ」
「でも、どうやったら、そんなに料理が出来る男になれるんだ!? いまさら、料理学校に通う時間なんかないし、そもそもぼくはマメじゃないから、君みたいなことは出来ないよ」
そこでぼくはそのムッシュにこう言ったのである。
「毎日、美味しいものを食べ歩くのに、5000円(30€)使ったとしよう。毎日、外食だから、月に15万円かかる。一年で200万円くらいかかっちゃうんだ。でも、君は奥さんがいるから、その倍、400万円(2,5万€)になる。お子さんもいるから、もっとかかる。でも、自分で料理が出来たら、プロ級に料理が出来たなら、400万円で高級車を買うことが出来るじゃないか? 10年に換算すると、4000万円(25万€)になる。小さな別荘が買える。それを料理が出来ないがために、全部、失っているわけだ。料理が出来る夫婦ならば、交互に料理すればいいのでもっと楽になる。みんな、料理をすればいいんだよ」
「なるほど」
「家をローンで買えば、家が手に入るからいいが、美味しいものに大金使って食べているうちは、美味しかった、という想い出しか残らない。君が奥さんと料理を学んで、美味しい家庭料理生活にシフトしてご覧、家が買える資金がたまる。さらに、夫婦円満になる。たまに、外食したらいいんだ。それもだ、その時は、ちょっといいレストランを選ぶ。で、最高級の美味しいものを食べたらいい、それは取材活動になる。外で食べた話題の料理を夫婦で自宅で再現する、つまり、家で研究したらいい、腕が上がる。ミシュランの味が家庭で出来るだなんて、最高じゃないか。味を盗め、大金払ったら、その分、取り返せ。つまり、外食は取材になるから、多少お金を使っても、無駄にはならないということになる。君はその年齢まで、むやみやたらと、お金を捨ててきたかもしれないんだ。料理さえできれば、人生は変わるのに、人が作る料理にお金を払って人生を棒に振って来たかもしれないだ。愚かじゃないか、どう思う?」
「ううう、なるほど~」
「しかもだ、自分で美味しいものが出来ると、家族が幸せになるばかりじゃなく、ご近所さんや、友人たちから羨望のまなざしを受けることになるし、人が集まって来て、鼻高々になるんだ。お子さんもいい子になって、お父さんのような父親になりたい、と思うかもしれないんだぁ~!!!!! うわっはっはっは~」
「分かった。でもな、ツージー、俺には無理だ。そもそも器用じゃないし、さっきも言った通り、君のようなマメな人間でもない。料理上手になんかなれない」
「君、やってもいないのに、最初から白旗をあげてどうするんだ。まず、何か一つでいいから、得意料理を作ることからはじめたらいいんだよ。何か一つ、得意料理を持つ。ペペロンチーノでもいいし、ビーフシチューでもいい、カツレツだっていいんだ。嫁さんとかに食べてもらい、美味しい、と言わせればこっちのものだ。そこから、次が始まる。どんどん、腕があがっていくだろう。作ることが出来るようになると、もっと美味しい料理を食べようという気持ちになり、もっとすごいレストランを探すようになって、そこで味をさらに学んで、人生がめっちゃ楽しくなるんだ。わかるかい、そうだよ、その目の輝きが大事なんだ。さぁ、一緒に何か作ろうじゃないか。奥さんを驚かせてやろう。世界で二番めに美味いものを作る家庭にしたらいいんだよ。最高じゃないか、違うのか、友よ!」
※ この人はフランスを代表するシェフですが、この話には関係がありません。ぼくの好きな料理人という意味で、つねに、ここから盗ませて頂いている、いわば、取材先ですね、あはは。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
そうは簡単にはいかないものですが、料理が出来ると、世界が変わるのは間違いありません。もしも、人生がうまくいかなくて、悩んでいるのであれば、料理、です。苦しい時こそ、じゃんじゃん炒めてがんがん食べたらいいんです。自炊ですから、お金もかからず、お腹がいっぱいになり、笑いがとまらなくなりますよ。ほんとうです。残念なことに、ぼくはそこに気が付くのがちょっと遅かったのです。あはは。はい、ボナペティ!
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