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【困った保護者とどう向き合うか(1)】「困った保護者」とは - 教育新聞

日本大学文理学部教授 佐藤 晴雄
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ちまたで「モンスターペアレント」という言い方がなされる。しかし、英語の原語を忠実に解釈すると「わが子を虐待する親」を意味する。つまり、元は「子にとってのモンスター」なのが、日本では「教員や学校にとってのモンスター」のように解されてしまったのである。

ともあれ、学校に無理難題を申し出る保護者が目立つようになり、ただでさえ多忙な教師たちの負担増に拍車をかけている。

とはいえ、保護者による苦情の中には、正当なものもある。体罰や不十分ないじめ対応など、明らかに学校や教師側の問題・ミスに対するクレームである。筆者が各地の教員研修でアンケートを実施した結果、「正当な苦情」は全体の6割から8割にも上った。近年、教師の非違行為が目立つようになったことも、そうした数字に影響しているかもしれない。むろん、これら「正当な苦情」への対応も教師の負担を増やすことになるが、もともとは学校側に非があったのだから仕方がない。

ここで問題にするのは、そうした「正当な苦情」ではなく、「無理難題の申し出」である。筆者が属する研究会(代表・小野田正利)では、それを「イチャモン」と呼ぶ。「イチャモン」は学校を最も困らせ、収束も困難な場合が多い。単なる改善要求にとどまらず、「教師に向いていない」「性格が悪い」「心が病んでいる」など、教師の人格否定にまで及ぶことさえある。

そうしたクレームは学校の業務を停滞させ、教師の負担を増やす。さらには児童生徒の教育に支障をもたらし、教師のメンタルにダメージを与えることになる。深刻な場合には、教師の自殺という最悪の結果を招くこともある。

学校を困らせる保護者には、次のような特徴がある。①苦情申し出などを何度も繰り返し、問題を長引かせる②教職員の解雇や異動を要求する③土下座や実現不可能な行為など過度な謝罪や対応を求める④常識外の高額な賠償を求める⑤要求を認めないと、犯罪行為をちらつかせて脅す。

今年4月、常識では考えられない事件が報道された。奈良県大和高田市で7年前からクレームを繰り返す祖父が孫の通う学校に因縁をつけ、校長を土下座させ、教委幹部も脅迫し、挙げ句の果てに数十万円以上のお金を繰り返し脅し取っていた。教委幹部らは、合計1億円超を私的に支払わされたという。むろん、その祖父は逮捕された。

この連載では、保護者のクレームの実態や傾向、学校としての対応の在り方などについて取り上げていく。

【プロフィール】

佐藤晴雄(さとう・はるお) 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。東京都大田区社会教育主事、帝京大学助教授を経て、現職。大田区勤務時代から住民などの苦情に数多く対応し、その後、小野田正利大阪大学前教授が主宰する「イチャモン研究会」に加わり、保護者対応について理論と実践の研究を続けている。中央教育審議会専門委員、日本学習社会学会会長などを歴任。主な著書に『保護者対応で困ったときに開く本』(教育開発研究所、編著)、『教育のリスクマネジメント』(時事通信社、田中正博との共著)など。

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