正社員となる望みがかなわず、母国ネパールに帰ろうにも新型コロナウイルス感染拡大の影響でかなわない-。北九州市で暮らすネパール人の男性(24)は職を失い、生活困窮に陥っている。短期滞在ビザはなんとか得たが、アルバイトも許されず、苦肉の策の生活保護受給も対象外。コロナ禍の異国で八方ふさがりの状態だ。
男性はタパさん(仮名)。現地の大学を中退後、2015年に来日。北九州市の日本語学校と情報ビジネスの専門学校を経て、19年4月から、ラーメン店を展開する企業(同市小倉北区)でアルバイトを始めた。
タパさんは同年1月ごろ、日本での介護職就職を目指し、専門学校の入学金まで支払ったが、企業から「正社員にする」との誘いがあり、進学をやめて企業で働くことを選んだという。在留ビザも「留学」から、就職準備の「特定活動」へ変更。ラーメン店でのバイトに汗を流してきた。
しかし、企業が求めた昨年4月新設の在留資格「特定技能」(外食業)の試験を2月まで計3回受験したものの不合格。特定活動のビザは3月18日までで、企業から「採用できない」と告げられた。タパさんは「合格しなければ採用できないとの説明を受けたことはない」とし、労働組合「ユニオン北九州」に支援を求めて駆け込んだ。
3月上旬にラーメン店の仕事を失い、入国管理局から認められたのは今月26日までの短期滞在ビザ。帰国を決め、公共料金の支払いなどで所持金を使い果たしたが、今度は新型コロナの影響で航空便がなくなるなどして帰れなくなった。たまりかねて16日、ユニオン関係者らと区役所に出向き、生活保護を申請したものの「外国人はそもそも生活保護法の対象外」(市保護課)。1954年の厚生省(現厚生労働省)通知により、外国人でも永住や定住者、認定難民に限り同法に準じた対応を受けるが、短期滞在ビザはその適用外という。
この企業は西日本新聞の取材に「特定技能の試験に合格すれば社員にするつもりだった。本人にも説明してきた」と言い分は食い違う。一方で企業は「一緒に働いてきた従業員。生活費の支給などは考えていきたい」と話している。
ユニオン北九州の本村真委員長は「夢を持った外国人労働者が追い込まれ、生活保護も頼れない。政府や自治体は、このような人たちを助ける方法を一刻も早く示すべきだ」と話している。 (竹次稔)
行政も支援検討を
北九州市立大の稲月正教授(社会学)の話 新型コロナウイルス感染拡大の悪影響が、立場の弱い外国人労働者に出てきている。働き口を失うと、ビザの更新が困難となる。まずは民間団体の協力を得て、衣食住を確保すべきだ。生活困窮者自立支援制度などのセーフティーネットをうまく活用できないか、人道的な立場からも行政は検討を急いでほしい。
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April 24, 2020 at 04:00AM
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社員になれず、帰国できず、生活保護も頼れず…コロナで散々な外国人 - 西日本新聞
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