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市民と対話重ねる文書館 尼崎、秋に博物館として再出発 - 日本経済新聞

尼崎市立地域研究史料館の閲覧室。年間2千件前後の相談に対応している

尼崎市立地域研究史料館の閲覧室。年間2千件前後の相談に対応している

尼崎市の公文書館、市立地域研究史料館は利用者の相談に応じる窓口対応(レファレンス)を重視し、住民と協働して研究に取り組み「対話する文書館」と呼ばれる。今年10月、45年の歴史に区切りを付けて市立歴史博物館に生まれ変わり、新たな門出を迎える。

個人の疑問に対応

史料館は阪神尼崎駅に近い総合文化センター7階の一角にある。閲覧室と収蔵庫、事務室を合わせて300平方メートルほどの小さな施設だが、別の場所にある分室(収蔵庫)と合わせ収蔵史料は33万点を超す。近世の古文書や近現代の公文書、新聞や絵はがき、ポスターや音声・映像など、尼崎の行政と人々の歩みを物語る多彩な史料をそろえる。

近世の古文書や近現代の公文書、様々な生活文化の資料など、分室も合わせ33万点以上を収蔵する

近世の古文書や近現代の公文書、様々な生活文化の資料など、分室も合わせ33万点以上を収蔵する

スタッフは正職員4人、非常勤8人。うち7人が歴史の専門家という充実した陣容を誇り、行うレファレンスは年間2千件前後に上る。コロナ禍で現在休館中だが「4月も電話やメールでの相談は49件あり、普段と同程度だった」と同館の河野未央さんは話す。

来館者は歴史学者ばかりと思いきや、個人の疑問や社会的な課題を解決すべく幅広い人々が相談を持ちかける。自分が戦時中に体験した空襲の全容を知ろうとする高齢者。街づくりに役立てようと地元の歩みを学ぶ住民組織。土壌汚染がないか土地履歴を調べる開発業者。アスベスト問題や年金記録不備の申し立てに向け居住歴や職歴を証明する資料を探す弁護士。市役所内から問い合わせもある。

求める情報は何に載っているのかスタッフが調べ方を案内し、検索を手伝う。「相談内容と解決への過程はデータベース化し、館内全員で情報と経験を共有して、サービス向上と均質化につなげている」と前館長の辻川敦さんは説明する。

「対話する文書館」。同館の専門委員を務める京都大の岩城卓二教授はこう呼ぶ。「レファレンスを重視する博物館や図書館は近年増えたが、尼崎はその先駆け。史料収集や研究など全ての業務の基盤に据えている点がこの館の特徴といえよう。歴史研究者が己の研究をしつつ相談に応じる体制が強みだ」と指摘する。

尼崎市が市史編修室を発展させて同館を設立したのは1975年。市町村の公文書館は今も多くはないが全国2番目だった。

だが図書館や博物館と違い認知度は低く、当初は来館者がゼロの日もあった。博物館なら展示を練ってテコ入れもできるが、展示スペースはない。90年代の初めから取り組んだのがレファレンスの充実だった。辻川さんは「専門家のための施設と思われがち。例えば『自分の先祖について調べたい』といった思いにも大切な意味がある、と利用を呼びかけた」と語る。

市井の学者育成

もう一つのカギが市史をひもとく歴史講座だ。26年前から続き、参加者の自主講座も開かれ、年に延べ約千人が受講する。受講者は整理作業などのボランティアとなり、予算や人手が限られた館の活動を支える。

「図説 尼崎の歴史」と「たどる調べる 尼崎の歴史」

「図説 尼崎の歴史」と「たどる調べる 尼崎の歴史」

同館の研究紀要「地域史研究」では、知識を深めた市民が市井の研究者としてプロと肩を並べて論文を発表。創刊50年目を迎える今秋に第120号を発行する予定だ。2007年と16年に刊行した市史「図説尼崎の歴史」「たどる調べる尼崎の歴史」では市民も執筆陣に加わり筆を振るった。

岩城教授は同館を「人を育てる文書館」とも表現する。「通常は博物館が史料を収集・保存・研究し、成果を公開して社会へ還元する一方通行。尼崎では館が住民と共に収集し保存、公開、研究して収集、と循環している。レファレンスの成果は目には見えにくいが文化財を生かす力を生む」

同館は7月にいったん閉じ、文化財の調査や展示などを担う市立文化財収蔵庫と統合。戦前に建った旧校舎を活用して新設する市立歴史博物館の史料部門として再出発する。伊元俊幸館長は「両館の持ち味を発展させ、相乗効果で以前にも増して市民に利用してもらいたい」と抱負を語る。

(編集委員 竹内義治)

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May 28, 2020 at 12:01AM
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