約100年前に世界中で大流行し、日本でも38万人以上の死者が出たとされる「スペイン風邪」に関する役場の文書が千葉県睦沢町で見つかり、町立歴史民俗資料館で公開されている。ワクチン接種の連絡など対応に追われる様子がうかがえ、学芸員は「新型コロナウイルスで世界が不安に包まれる中、大正時代の役場の動きを示す資料が見つかったことは意義深い」としている。

文書は旧東村(現在の長南町と睦沢町の一部)役場が発行した3通で、睦沢町内の旧家から寄贈された行政文書など432点の中から、同館の久野一郎学芸員(63)が発見した。1920年1~2月に地区の代表者宛てに送られ、国内人口の約半数が治療を必要とし、12万人以上が亡くなったとされる第2の流行ピークと時期的にも合うという。

3通のうち1通は、ワクチンの希望人数の取りまとめを依頼する内容で、代金は1人分7銭とあった。約10日後の別の文書では、東京の北里研究所にワクチンを注文したが製造が間に合わず、遅れるとともに、価格も30銭くらいになると書かれていた。当時、米1升が40~50銭程度だったという。

久野学芸員は「過去の経験を思い起こし、コロナに打ち勝つヒントが得られれば」と期待を示した。(共同)