新型コロナウイルス対策の専門家会議の議事録作成を見送る政府方針は、事後の検証への支障となりかねない。公文書管理への安倍政権の姿勢が改めて問われる。政府は議事概要に発言者を明記することで国民の理解を得たい考えだが、野党からは「議事録を作るのが大前提だ」との批判が相次いだ。

新型コロナ対応について、政府は徹底した公文書管理を求める「歴史的緊急事態」に指定している。議事録を作らないのは、専門家会議が「政策決定または了解を行わない会議等」に該当するためだと説明してきた。政府内には議事録の作成に前向きな声も出ていたが、内向きの論理が優先した形だ。

官邸筋は「現在公表中の議事概要でも内容は十分詳しい」と述べ、議事録を作らなくても問題ないと釈明する。だが議事概要では、発言内容を加工できる余地が残る。将来の感染症対策の参考資料として、正確さを欠くとの指摘も出そうだ。

立憲民主党の逢坂誠二政調会長は取材に「最悪の対応だ。専門家会議の発言は専門的見地から出たものであり、本来隠す必要はない」と非難した。共産党の田村智子政策委員長は「議事概要では、どこかが削られていても分からない。専門家がどんな知見を持って対応を考えていたか、国民が知ることは重要だ」と訴えた。(共同)