東京都内の新型コロナウイルス感染拡大の予測に関し、厚生労働省クラスター班の押谷仁東北大教授らが作成した資料2通を、提示された都が廃棄していたことが13日、分かった。都の担当者は「行政文書ではなく問題ない」としている。

都によると、押谷氏らは、都内の感染者数などを予測、分析した資料を3月17日、19日、21日の計3回提出。最終的な予測は21日分で、都はこれを参考に政策を決定し、17日、19日分を廃棄していた。途中段階の文書とはいえ、廃棄により政策決定経緯の検証が困難になる恐れがある。

17日の資料では、現状の対策のままでは2週間後に都内で約1万7千人に増えると予測していた。押谷氏らが、都が提供した情報を基に再分析し、19日に都幹部に送ったメールでは約3千人に下方修正。さらに21日には4月2~8日の新規感染者が320人になるとの予測を改めて示した。

都福祉保健局は、廃棄した2通について「3月17日の資料は、押谷氏から分析のモデルケースとして提示されたもの。19日は途中経過として出されたものだった」と説明。小池百合子知事に対しては、2通の内容を口頭で説明したが「政策の意思決定過程とは関係ない」としている。

小池氏は3月23日の記者会見で、21日の資料のみを紹介し「医療体制をしっかりと準備をしていく」と述べた。この時点の都の対策は、大規模イベントの自粛を継続する一方、休校中だった学校は新学期からの再開準備を進めた。25日には新規感染者が41人に達し、初めて週末の外出自粛を呼び掛けた。

4月2~8日の実際の新規感染者は320人の2倍以上の777人だった。(共同)