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時代で変わるおせち料理「世代を問わないメニューに需要も」高島屋バイヤーに聞くトレンド - Business Insider Japan

近年のおせちメニューの傾向やトレンドにはどんな変化が見られるのか。ウクライナ情勢や物価高の影響は。そして、2023年正月向けのおすすめおせち料理は。

近年のおせちメニューの傾向やトレンドにはどんな変化が見られるのか。ウクライナ情勢や物価高の影響は。そして、2023年正月向けのおすすめおせち料理は。

撮影:吉川慧

厳しい残暑がまだまだ続いているが、百貨店では来年の「おせち」商戦がスタートした。高島屋は9月1日、2023年の正月向けに販売するおせち料理の内覧会を開催。彩り豊かな美しいおせちが数多く並んだ。

おせちは、その時代の社会を映す鏡とも言える。近年のおせちメニューの傾向やトレンドにはどんな変化が見られるのか。ウクライナ情勢や物価高の影響は。そして、2023年正月向けのおすすめおせち料理は。高島屋の担当バイヤー、天笠亜佑子さんと山下義隆さんに聞いた。

巣ごもり消費でおせち重要は好調「前年比12%」

2023年のおせちを担当する高島屋バイヤーの天笠亜佑子さん(右)と山下義隆さん(左)。

2023年のおせちを担当する高島屋バイヤーの天笠亜佑子さん(右)と山下義隆さん(左)。

撮影:吉川慧

高島屋によると2022年のおせちの売上は「前年比12%」と大きく伸長した。背景にはコロナ禍の巣ごもり消費があったと高島屋はみている。

「旅行や外食を控え、お金を使う機会が減った。『年末年始は家にこもるので、おせち初めて買ってみようか』という方が非常に増えました」(天笠さん)

高島屋では、2022年から2023年にかけての年末年始は「旅行や外食の需要も復活の兆しがみられる」としつつ、年に一度のハレの日のおせち料理を楽しむ傾向は続くと見込む。売上目標は前年比プラス7%を掲げる。

「3年ぶりに行動制限要請のないお正月が想定され、帰省などで人が集まるシーンが増えるのではないか。ここ数年人気だった個食向け人気は少し落ち着き、3〜4人向けのおせち需要が高まると想定しています」(天笠さん)

時代で変わるおせちのトレンド「世代を問わないメニュー需要も」

定番メニューだけではなく、洋食や中華などオードブルとして楽しめるおせち需要も。写真は「一富士」洋・中 一段。1万4040円。

定番メニューだけではなく、洋食や中華などオードブルとして楽しめるおせち需要も。写真は「一富士」洋・中 一段。1万4040円。

おせちをめぐっては、核家族化などライフスタイルの変化からコロナ禍前から一定の購入需要があった。家庭で作る時代から、買う時代へ──。このトレンドは平成期から続いているようだ。

天笠さんによると、核家族世帯では大きいおせちだと余ってしまうため「昔のような大きな三段重より、小さめのおせちが求められる傾向」が続いているという。

近年は元日を含む3が日から開店している飲食店や食料品店もあり「おせちを元日にしか召し上がらない方も増えた」(天笠さん)という。

黒豆、栗きんとん、田作りなどの伝統的な品目も定番としてあるが、ローストビーフや鴨料理など、肉を用いたオードブルや中華おせちも増えている。

バイヤーの山下さんは「世代を問わず、おじいちゃんおばあちゃんもお子さまも、一緒に食べられる料理のバリエーションが求められています」と話す。

また、コロナ禍では「お取り寄せ」グルメを利用する機会が増えたことで、おせちを購入するハードルも下がっていると分析する。

「店頭でも、従来は『初めて買うのだが、どんなものがいいか』という相談が多かったですが、ここ数年は『昨年はこういうおせちを購入したが、もっとこういうものはないか』と具体的な相談が増えたと感じます」(天笠さん)

おせちが年に一度の「究極のお取り寄せグルメ」として定着したからこそ、おせち料理の楽しみ方も多様化していると高島屋ではみている。

高島屋のおせちの購入層はネット販売では30代〜40代がメインで半分が女性。紙のカタログでの発注は60代〜80代だ。

天笠さんは「若年層でもお正月のアイコンとしておせちをご購入いただいている。見た目が華やかな和食のおせちにも一定の需要がある。Instagramなど『SNS映え』も背景にあるのでは」と分析する。

ここ数年、最も人気があるのは「2段重で2〜3人前、平均価格は2万円程度」だという。おせちだけではなく、オードブルやすきやき、鍋料理などとともに正月の料理を楽しむ傾向が定着しているという。

ウクライナ情勢、物価高の影響も メニュー開発、価格調整に苦労

高島屋のおせちカタログ2023より

高島屋のおせちカタログ2023より

撮影:吉川慧

一方で、2023年のおせちにはロシアのウクライナ侵攻に伴う国際情勢や世界経済の動向の影響を受けそうだ。一大産地だったロシア産のイクラやカニなどの海産物は現在「流通が非常に不安定」だという。

例年だと、おせち商戦の準備は春頃から始まるが、今年はウクライナ情勢の行方が見通せなかったこともあり、早め早めの準備を進めたという。

国産や別の産地のものを探したり、もともと業者が冷凍で保有していた材料を押さえるなど、例年より1〜2カ月早く材料・食材の確保に動いた。メニューも工夫し、価格をおさえるように努力した。

「カニを用いる料理はできるだけ減らし、海老などで代替したり。イクラも膾(なます)と和えるなどでメニューを工夫し、量目を抑えることで価格に転嫁することをできるだけ避けました」(天笠さん)

海産物だけではなく肉などの他の食材、包装費や物流費などあらゆるものが高騰しており「(昨年よrも価格が)下がっているものがない状況」で、価格調整には苦労があったという。

「できるだけ価格に反映させないよう」に努めたが、高島屋のおせち全体としては前年比7%の値上げとなる。

「おせち料理に(豪華さや華やかさを)期待されるニーズがあり、ガラッと量を減らしたり品質を落としたりはできるだけ避けたい。早めの資材・食材確保、メニューの工夫、コストの見直しで、品質を維持しつつ、できるだけ価格に反映させないよう、何とか7%で踏みとどまれるようにしました」(天笠さん)

高島屋は1150種類のおせちを用意 2023年は「進化系」がコンセプト

おせちが「究極のお取り寄せグルメ」として定着しつつあるとみる高島屋は、従来よりさらにスタイルを“進化”させたおせちの需要を見込む。

高島屋では全店の店頭で約900種類、オンラインストア・通信販売で約250種類を用意。約1150種類で2023年のおせち商戦に備える。

9月1日の内覧会ではこのうち「進化系」と銘打ったラインナップをバイヤーが紹介した。

好きなものでカスタマイズ「よりどり彩りおせち」

“自分だけのオリジナル”がつくれるカスタマイズおせち。練り物の名店「日本ばし神茂」の伊達巻、すきやきの老舗「人形町今半」の黒毛和牛の佃煮、「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」落合務シェフのタコのジェノベーゼなど、有名店が監修する全30品目から好きな12品目を選ぶバイキング形式。1品目あたり1200〜2400円。1万5000〜1万7000円前後での需要を見込む。

「よりどり彩りおせち」は有名店が監修する全30品目から好きな12品目を選ぶバイキング形式。

「よりどり彩りおせち」は有名店が監修する全30品目から好きな12品目を選ぶバイキング形式。

撮影:吉川慧

同じ商品を選ぶことも可能。割烹の老舗「日本橋とよだ」の数の子とキクラゲ煮、東京・三田「菩提樹」の鮑のオイスター煮尽くしなど、自分だけのオリジナルおせちも可能だ。

同じ商品を選ぶことも可能。割烹の老舗「日本橋とよだ」の数の子とキクラゲ煮、東京・三田「菩提樹」の鮑のオイスター煮尽くしなど、自分だけのオリジナルおせちも可能だ。

撮影:吉川慧

人気パティシエ監修のパティスリーおせち

ここ数年人気のスウィーツおせち。2023年は「トシ・ヨロイヅカ」(鎧塚俊彦シェフ)、「モンサンクレール」(辻口博啓シェフ)らが参加。マカロンで知られる「ピエール・エルメ・パリ」も用意。

「トシ・ヨロイヅカ」スウィーツおせち二段重。お正月料理を表現しており、鏡餅に見立てた白あんとショコラブランのムースの求肥包み、正月らしい市松模様の抹茶テリーヌなどが入る。1万6200円。

「トシ・ヨロイヅカ」スウィーツおせち二段重。お正月料理を表現しており、鏡餅に見立てた白あんとショコラブランのムースの求肥包み、正月らしい市松模様の抹茶テリーヌなどが入る。1万6200円。

撮影:吉川慧

「モンサンクレール」スウィーツおせち一段。おせちをあけたときの感動を表現。抹茶バスク、バターサンド、ショコラ、ムース、モンブランなど多種多様なメニューを楽しめる。9001円。

「モンサンクレール」スウィーツおせち一段。おせちをあけたときの感動を表現。抹茶バスク、バターサンド、ショコラ、ムース、モンブランなど多種多様なメニューを楽しめる。9001円。

撮影:吉川慧

「ピエール・エルメ・パリ」スウィーツおせち三段。代名詞のマカロンをはじめ、さまざまなスウィーツが詰まった。フラワーアーティストとコラボした華やかな風呂敷もセット。3万6300円。

「ピエール・エルメ・パリ」スウィーツおせち三段。代名詞のマカロンをはじめ、さまざまなスウィーツが詰まった。フラワーアーティストとコラボした華やかな風呂敷もセット。3万6300円。

撮影:吉川慧

ヘルシートレンドを意識。美味しく栄養豊富な“機能性おせち”

コロナで高まった健康意識を捉え、栄養素にこだわった。ラグビー選手が開発に参加し、「第6の栄養素」とも言われることもある食材繊維に着目したおせち。

「高島屋ラグビー応援おせち」和・洋・中二段重。高タンパクにこだわったメニュー。紅白羊羹でデザインしたラグビーウェアやチョコのラグビーボールも。ラグビーW杯3大会連続出場の田中史朗選手が開発に参加。2万8080円。

「高島屋ラグビー応援おせち」和・洋・中二段重。高タンパクにこだわったメニュー。紅白羊羹でデザインしたラグビーウェアやチョコのラグビーボールも。ラグビーW杯3大会連続出場の田中史朗選手が開発に参加。2万8080円。

撮影:吉川慧

管理栄養士が監修した「家族三世代で楽しむ栄養おせち」。高島屋と阪急阪神の共同企画。一、二の重にはタンパク質を考慮した料理。三の重には食物繊維にこだわったメニュー。3万9960円。

管理栄養士が監修した「家族三世代で楽しむ栄養おせち」。高島屋と阪急阪神の共同企画。一、二の重にはタンパク質を考慮した料理。三の重には食物繊維にこだわったメニュー。3万9960円。

撮影:吉川慧

人気の肉づくしおせち

名古屋名物のみそかつ「矢場とん」、レストラン明治亭、ローストビーフで知られる「鎌倉山」などを用意。

「名古屋名物みそかつ矢場とん“勝つ”おせち」。南九州産のひれとんかつ、祝いの場にふさわしいずわいがに甲羅フライなど、フライをぎっしり詰めたお重。味噌だれを生かした変り種おせち。3万円。

「名古屋名物みそかつ矢場とん“勝つ”おせち」。南九州産のひれとんかつ、祝いの場にふさわしいずわいがに甲羅フライなど、フライをぎっしり詰めたお重。味噌だれを生かした変り種おせち。3万円。

撮影:吉川慧

「レストラン明治亭」洋一段。合鴨とポークのテリーヌ、ローストビーフなど全14種類の肉メニューを詰めたおせち。1万6200円

「レストラン明治亭」洋一段。合鴨とポークのテリーヌ、ローストビーフなど全14種類の肉メニューを詰めたおせち。1万6200円

撮影:吉川慧

「ローストビーフ店 鎌倉山」洋一段。鎌倉山の看板料理ローストビーフを6種類盛り込んだおせち。2万1600円。

「ローストビーフ店 鎌倉山」洋一段。鎌倉山の看板料理ローストビーフを6種類盛り込んだおせち。2万1600円。

撮影:吉川慧

“高級お取り寄せグルメ”を味わう名店コラボおせち

名店がコラボした豪華競演おせちや、海外旅行の気分が味わえるおせちを用意。

「夢の饗宴おせち」和・洋・中 三段重。東京・銀座の「銀座 和久多」、山形のイタリアン「アル・ケッチャーノ」、東京・六本木の「中國名菜 孫」がコラボ。9万7200円。

「夢の饗宴おせち」和・洋・中 三段重。東京・銀座の「銀座 和久多」、山形のイタリアン「アル・ケッチャーノ」、東京・六本木の「中國名菜 孫」がコラボ。9万7200円。

「ペック」洋一段。ミラノの高級食料品店「ペック」から、冷静アンティパストを中心に。1万5120円。

「ペック」洋一段。ミラノの高級食料品店「ペック」から、冷静アンティパストを中心に。1万5120円。

撮影:吉川慧

「ダルマイヤー」洋二段重。ドイツ・ミュンヘンの老舗ブランド「ダルマイヤー」のデリカテッセンでドイツ気分を。2万8080円。

「ダルマイヤー」洋二段重。ドイツ・ミュンヘンの老舗ブランド「ダルマイヤー」のデリカテッセンでドイツ気分を。2万8080円。

撮影:吉川慧

家族3世代で一緒に楽しめるおせち

人気のキャラクターや鉄道ボードゲームとセットになったもの、干支にちなんだものなどファミリーで家族3世代で楽しめるおせち。幅広い世代の皆様が楽しめるおせち料理を用意。

「高島屋×セサミストリート」和・洋 おこさま 二段重。100以上のキャラクターが登場するセサミストリート。新年のテーブルで「多様性を理解する心を育んでいただけるよう」との思いを込めた。重箱も風呂敷もオリジナルデザイン。2万1600円。

「高島屋×セサミストリート」和・洋 おこさま 二段重。100以上のキャラクターが登場するセサミストリート。新年のテーブルで「多様性を理解する心を育んでいただけるよう」との思いを込めた。重箱も風呂敷もオリジナルデザイン。2万1600円。

撮影:吉川慧

「高島屋家族三世代おせち」和・洋・中・おこさま。昭和・平成・令和と時代を超えて愛される「ウルトラマンシリーズ」をおせちに。カラータイマーなどのアイテムや作中に登場する怪獣を表現。オリジナルお重、風呂敷、祝箸もセットで。3万240円。

「高島屋家族三世代おせち」和・洋・中・おこさま。昭和・平成・令和と時代を超えて愛される「ウルトラマンシリーズ」をおせちに。カラータイマーなどのアイテムや作中に登場する怪獣を表現。オリジナルお重、風呂敷、祝箸もセットで。3万240円。

撮影:吉川慧

「鉄道で日本を旅するおせち」二段重。北は北海道の松前漬から南は沖縄のサーターアンダギーまで、各地の郷土料理をオードブル形式で。鉄道のボードゲームも付属し、旅行気分が楽しめる。2万9160円。

「鉄道で日本を旅するおせち」二段重。北は北海道の松前漬から南は沖縄のサーターアンダギーまで、各地の郷土料理をオードブル形式で。鉄道のボードゲームも付属し、旅行気分が楽しめる。2万9160円。

撮影:吉川慧

ペットと一緒にお正月を祝うおせち

ペットと一緒にお正月を楽しめるよう、ペット用の料理も一緒にセットしたおせち料理。犬用と猫用の2種類を用意した。

「ペットと一緒にお正月を祝うおせち」。華やかなおせち料理37品目に加え、ペット用の料理5品を詰め合わせ。1万6956円。

「ペットと一緒にお正月を祝うおせち」。華やかなおせち料理37品目に加え、ペット用の料理5品を詰め合わせ。1万6956円。

撮影:吉川慧

「美味しくサステナブル」を意識したおせち

高島屋ブランドのおせち(PB)の一部では、2022年からお重の中で使用するプラスチックを紙に変更。2023年は店頭販売しているPBおせち42種類のうち21種類の仕様を変更し環境に配慮したおせちを提案。

「高島屋和・洋・中おせち」三段重。3万2400円。

「高島屋和・洋・中おせち」三段重。3万2400円。

撮影:吉川慧

人気のオードブルおせち

2022年は洋風や中華の少人数おせちを年末年始に食べるオードブルとして注文するケースが増加。これを受けて2023年は帰省する人、家族や親族などで集うシーンが増加することが予測し、オードブルおせちを特集。

「ANA クラウンプラザホテル富山」和・洋 一段。1万5500円。

「ANA クラウンプラザホテル富山」和・洋 一段。1万5500円。

撮影:吉川慧

「一富士」洋・中 一段。1万4040円。

「一富士」洋・中 一段。1万4040円。

撮影:吉川慧

高島屋の2023年のおせち予約は、オンラインが9月16日午前10時〜12月26日10時まで。店頭では9月21日〜12月25日まで。

(文・吉川慧

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