世界中の家庭の台所を訪ねて、その家の人たちと一緒に料理を作り、味わい、そこから見える暮らしについて考察を重ねている岡根谷(おかねや)実里さん(34)。20余りの国・地域の120以上の家庭の台所を「探検」してきた経験から、食の営みを通じて見えてくる様々な発見、その楽しさについて聞きました。
――滞在先では、家の人が台所で料理をする様子をつぶさに見せてもらうのですか。
観察というよりも、一緒に料理をさせてもらいます。見ているだけではわからないことがたくさんあります。この前は中央アジアのキルギスで麺を作ったのですが、私がやるといっこうに生地が伸びなくて。よく見ると、家の人たちは生地を左手で転がしながら右手で引っ張って伸ばしていました。「野菜を切って」と頼まれて、「それぐらい手伝えるよ」と思っても、「硬すぎて切れない!」というときも。一緒に手を動かすことで、言葉ではない会話、五感を使ったコミュニケーションが生まれます。
乾燥した地域で お米の料理 「なぜ?」
――台所では何に注目するのでしょう。
疑問が次から次へと湧いてくるんです。先日訪問したウズベキスタンは、すごく乾燥した地域なのに、国の代表的な料理はプロフというコメ料理なんです。降水量が年間400ミリ程度の、小麦栽培すら難しい地域で「なんでコメなの?」って。これは、アジアとヨーロッパを結ぶ交易路で各地の食材が手に入ったからとか、ソ連の時代に灌漑(かんがい)設備が整備されたからといった歴史的背景がありそうです。
野菜もそうです。ウズベキスタン出身の人に「日本の野菜は味が薄い」と言われて、違いを調べてみました。品種か、肥料か、調理する際の水質か、それとも食べる側の嗜好(しこう)か……。仮説をたて実験もしてみました。確定的な事実にはたどりつけませんでしたが、自然環境と社会条件の複数の要因が絡み合って、野菜の味ができあがっていることが理解できました。
――目の付けどころがユニークで鋭いですね。
オタクですよね(笑)。「野菜の味が薄い」問題のリポートは、投稿サイト「note」に書いたら、かつてない反響がありました。遠い国の、関心を持つきっかけすらない話題に、ちょっとでも興味を持つきっかけが作れたらいいなと思っています。
台所は、社会や人とつながる「窓」だと思っています。料理することで、あるいは一緒に食べることで、その国や地域に住む人とつながれる感じがします。
――特に印象深かった台所は…
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