その後、施設の先輩から不妊手術だったことを知らされた北さんは、手術のことを周囲に打ち明けられませんでした。
29歳の時に結婚。事情を知らない妻は子どもができずに悩んでいたといいますが、それでも事実を伝えることができませんでした。
打ち明けたのは結婚してからおよそ40年後。妻が亡くなる間際になってからでした。
事実を知らされた妻は、北さんを責めることもなく、「ごはんだけはちゃんと食べるのよ」と北さんの体を気遣いながら、亡くなったといいます。
妻が死亡してから5年後のおととし、手術を受けた人たちが声を上げはじめ、国を訴える動きが出てきたことを知りました。
そして、医療機関で自分の体に手術のものと見られる痕があることを確認し、裁判を起こしました。
去年5月、一連の裁判では最初となる判決が仙台地方裁判所で言い渡されました。
旧優生保護法が憲法違反だったことは認められましたが、国への賠償請求は退けられました。
その理由の1つは「除斥期間」。
原告たちが手術を受けた時点から20年が過ぎ賠償を求める権利が消滅したとされたのです。
北さんはこの判決に強い疑問を感じました。
手術を受けた当事者はみずから声を上げることが難しく、当時、裁判を起こすことは到底無理だったと考えているからです。
北さんは「私自身、手術を受けたことを誰にも言えずにいて、事実を公にして裁判を起こすことはできなかった。国は問題を放置し続けたのに、賠償責任が認められないのはどう考えてもおかしい」と話しています。
不妊手術を受けた当事者に対し、国は去年4月、一時金320万円を支払う制度を設けました。
しかし、北さんは国の責任を明確にするため、一時金の申請を行わず、裁判を継続しました。
手術を受けた当事者やその家族で作る団体の共同代表にも就任し、各地で行われている裁判や集会に足を運んで強制手術の実態を訴えてきました。
北さんは30日、『正義と公平な裁判を』と記した手作りの紙の花を胸につけて判決に臨むことにしています。
北さんは「不妊手術を受けさせられてから60年以上、苦しみと悲しみを抱えて生きてきた。77歳と高齢になり人生残り少なくなってきたので何とか国の責任を認めてほしい」と話しています。
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June 30, 2020 at 02:07AM
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旧優生保護法下の不妊手術めぐる裁判 きょう判決 東京地裁 - NHK NEWS WEB
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