
6年生は志望校の過去問演習に励んでいる時期でしょう。この過去問演習は何のためにやるのでしょうか。「合格の可能性を知るために、何点取れるか試してみる」「出題傾向を知り、形式や時間配分に慣れる」「繰り返し解いて完璧に理解して、自信を付ける」など、志望校に応じた目的意識を持って取り組んでいると思います。
いずれにせよ、本番で合格ラインを超えるための戦略を練り、その学校が要求する力を付けていくことが目的であることに変わりありません。
ただし、その具体的な方法はすべての学校において一様ではありません。5~6分経過したら次の小問に移らなければいけない入試もあれば、複雑な設定の長文問題で条件整理をしたあと、複数解を調べ切るのに15~20分かかるという入試もあります。
入試問題の傾向を「その学校が要求する学力」という観点から分類すると、主に次のような二つのタイプに分かれます。
Aタイプ…正確な処理能力とスピードを要求するタイプ
Bタイプ…高度な思考力や粘り強さを要求するタイプ
Aタイプの学校かBタイプの学校かによって対策は随分と違ってきます。
Aタイプの学校は、基本知識の習得や処理能力を重視しており、学習すべきことをきちんと学習してきたかということを問うため、設問数が多く、そのほとんどがパターン問題で構成されている入試です。当然、時間内に全ての問題を解く必要はありませんが、できるだけ「スピードアップ」と「弱点補強」をしておきたいものです。
「スピードアップ」については、問題を読むスピード、パターンを認識するスピード、計算のスピードなど入試本番で必要なスピード感が実感できるまで練習を積み重ねてください。また、問題の取捨選択や解く順番の決め方についても、自分なりの型を作り上げていきましょう。
「弱点補強」については、苦手分野すべてを克服することは現実には難しいものです。塾では6年生の今の時期でも単元学習を行っていますが、過去問を分析して、どの単元を重点的に学習し、どの単元を切り捨てるかを決めていきます。例えば志望校の過去問に毎年のように「場合の数」と「立体図形」が出題されていて、それが得点すべき問題であったとします。自分がその分野を苦手とするなら塾のテキスト(もちろん、自分に合った問題集などでもかまいません)のその単元を徹底的に理解・演習しなければなりません。また、その反対に「場合の数」や「立体図形」が出題されていない、あるいは出題されていても合否の決め手とはならない場合は切って捨てることも大切です。
Bタイプの学校には東大現役合格者を数多く輩出する進学校が多く、主に一つのテーマを深く考えさせる大問が4、5題という構成になっています。なるべく多くの年度を解いて、そのスタイルに慣れることが重要ですが、同じ年度のものを何度も繰り返し解いて点数を上げることはあまりお勧めできません。
Bタイプの入試で問われるのは、型にはまった問題を解く力ではなく、その場で実験したり試行錯誤したりして粘り強く考える力です。
具体的には、次の(ア)~(エ)になります。
(ア)条件に従って書き出したり、調べたりすることで本質に迫っていく力
(イ)長文の内容を正確に読み取り、情報を整理し、複数の条件を組み合わせて答えの道筋を引き出す力
(ウ)図形の移動の様子などを正確に作図することができ、さらに求積の方法を工夫して計算を省略できる形に持ち込む力
(エ)複雑な平面図形や立体図形の構造を見抜き、解法テクニックを適用する力
(ア)~(エ)いずれにおいても、初見の問題であるからこそ鍛えられる力です。2度目以降の繰り返しにおいては、1度目に試行錯誤を通して見つけ出した解法や、解説を読んで理解した解法を記憶をたどって再現するような解き方になります。このような取り組み方は、パターン問題をスピーディーに処理しなければならないAタイプの入試対策としては意味がありますが、初見の問題への対応力を試されるBタイプの入試対策としてはほとんど意味がありません。
繰り返し解くよりも、問題構成の研究や戦略の振り返りに力を注いだ方が効果的です。出題者の誘導にうまく乗れば気持ちよく解ける問題、解法は浮かびやすくても作業量が多いため時間がかかる問題、ひらめき要素が強く、はまってしまうとかなりの時間を費やしてしまう問題……など。問題の特徴を見抜く眼力を鍛え、それらの問題への取り組み方を振り返り、「手を着ける問題であったかどうか」「何をしていたら解けていたのか」「どこに着目すべきであったのか」を自分自身で気付いた時に、次へ生かすことができるのです。
また、「学校別模試」を利用するのも大変有効です。お子さんが志望する中学の合格者数が最も多い塾で実施しているものを選ぶのがよいでしょう。同じ志望校の受験生が多数集まって本番と同じ形式で行われますから、これ以上の「シミュレーション」はないと言えます。
得点力アップに欠かせないのがミス対策です。この時期、受験生ならミスに対しての意識はかなり高まっているはずです。しかしながら、どれだけ気を付けていてもミスは発生してしまうものです。だからこそ、見直し・検算をするのですが、独立小問と大問とではやり方が違ってきます。
独立小問では、正解する自信のないものにだけ、解いた直後に問題番号をマルで囲むなどして「後で見直す必要あり」の意味という印を付けておきます。そして、自分が解くべき問題を全部(問題用紙に載っている問題全部ということではありません。いわゆる「捨て問」を除いた全部という意味です)一通り解き終わった後に印を付けた問題だけ見直し・検算をします。すべての問題を時間内に見直し・検算しようとすると焦ってしまい、返ってミスを増やすだけです。
大問の場合は、小設問が誘導形式になっている場合が多く、(1)をミスしてしまうと、(2)以降すべて不正解になってしまうという事態が起こります。時間を費やしたのに得点できないという最悪のケースを避けるために、それぞれの小設問を1問解くごとに見直し・検算をする必要があるのです。見直し・検算の時間も含めたペース配分を意識して過去問演習を行ってください。
以上が受験生の学習法についてでした。ここから後は保護者の方へ、この時期の受験生との関わり方について述べていきます。
受験ママ・パパの書いた本やブログが書店やネット上で非常にたくさん出回っています。「こういう勉強法に効果がある!」「こうしたら合格しました!」など、成功体験談やノウハウが好意的に、そして自信満々に公開されています。しかし、我が家ではその通りにやることが難しい、あるいはその通りにやってみたがあまり効果はなかったというケースが少なくありません。
同じぐらいの成績で同じぐらいの偏差値の学校(これはあくまでも塾が決めた偏差値という意味です)を目指していても、どのような環境下で、どのような勉強をしてきたのかなど、現在に至るまでの過程がそれぞれ違います。その点を考慮しないで、この時期になって他人の
教育雑誌の中学受験特集などで、受験に臨むにあたっての「理想的な」ファミリーモデルを提示されたり、塾の保護者会などで「親御さんは、お子さんの優しいマネジャーになってください」「笑顔でお子さんに接してください」「叱らないで、褒めてあげてください」というようなことを指示されたりします。しかし、これらを真に受けて、他者が示した「理想の保護者像」に自分を近づけようとするのは大きなストレスとなることでしょう。
12歳前後といえば子供の自我が確立され始める時期です。この大切な時期に、ストレスを抱えながら他の誰かを演じているだけの親に接することは、成長過程において、むしろマイナスになるのではないでしょうか。
褒めることだけが愛情ではありません。叱るべき時には叱らなければならない。衝突を恐れず向き合っていくという覚悟を持つことも強い愛情の
他者の真似をしたり、他者の指示に従ったりするのではなく、自分と我が子を信じて、自分流の子育てをなさってください。
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November 09, 2020 at 04:01AM
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この時期の学習法と保護者の関わり方…粟根秀史<5> - 読売新聞
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