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美味の宝庫・青森の郷土料理を作りたくなって…飯ずし、貝焼きみそを教わる - 読売新聞オンライン

 東は千葉、西は福岡まで転勤を繰り返してきたが、本州の北端、青森ほど郷土料理が豊かな地はない。「かゆ」が「け」となまったとされる「けの汁」、刻んだゲソを野菜などと混ぜて揚げた「いがめんち」……。津軽弁の名前が料理を一層味わい深くしてくれている。自分でも春らしい料理を作ってみようと思い立ち、料理研究家の千葉彩子さんを訪ねた。

 青森市生まれの千葉さんは、「青森は三方が海に囲まれて海の幸が豊富なうえ、津軽平野で稲作、県南部で畑作と山の幸にも恵まれています」と話す。豊かな食材に加えて、長い冬を乗り切るために魚や野菜を塩漬けにして保存し、様々な料理を作ってきたことが美味の宝庫を作ったのだという。

今回は、ホタテを煮て卵でとじた「ホタテの貝焼きみそ」と、「みがきニシンの飯ずし」を教わった。

 初めに飯ずしを作った。北海道でとれるニシンは青森ではなじみ深い食材だ。流水で洗ったニシン10本の頭と背びれを落とし、1本を斜めに三つに切る。塩小さじ2杯を入れた市販のすし酢2~2・5カップにニシンを1時間ほど浸し、味を含ませる。

 青森で「ササタケノコ」と呼ばれるネマガリダケ100グラムはゆでて斜めに切り、ニシンと一緒に10分ほどすし酢に浸す。

 2カップ分の米を軟らかめに炊いて作ったすし飯には、いずれも千切りにしたショウガ80グラムとニンジン100グラム、いずれも輪切りにしたタカノツメ2本とキュウリ1本を混ぜる。さらにニシンとタケノコを入れて混ぜ、ラップで包んで重しをのせた。発酵して食べられるようになるまで千葉さんに保管してもらう。

 次はホタテの貝焼きみそだ。貝柱と卵巣は一口大に切り、ひもは汚れを落として長さ3センチに切る。ホタテの大きな貝殻に、カタクチイワシで作った焼き干し2本を二つ折りにして入れ、貝の深さの3分の2の量の水を入れた後、弱火にかけてだしを取る。

 焼き干しを取り、煮詰まってきたら貝の深さの半分まで水を足し、赤みそ大さじ1杯を加え、沸騰したら切ったネギとホタテを入れる。ホタテに軽く火が通ったら、2個分の溶き卵を少しずつ流し入れ、半熟になったら完成だ。

 ホタテは熱でうまみが引き出され、貝殻を通してしみ込んだ陸奥湾の潮の甘みが口の中に広がる。焼き干しの濃厚なだし汁からは磯の香りが立ち上がってきて、青森らしい逸品だ。

 6日後、ラップを取ると日本酒の吟醸香のような香りがふわっと漂ってきた。

 千葉さんがかき混ぜた飯ずしを皿に盛ってくれたが、傍らには茶わんに盛ったご飯が。主食が二つになるのではないかと思ったが、「飯ずしは主食ではなく主菜です」。飯ずしのご飯は発酵のために入れただけで、あくまでニシンをおかずとして食べるための保存食なのだ。

 硬かったニシンは発酵で軟らかくなり、味もマイルドにはなっているが、重厚なうまみをたたえていてご飯のおかずにちょうどいい。タケノコのかすかなほろ苦さとショウガの青みを伴った辛み、キュウリのさわやかな香りが、飯ずしに軽やかな風を吹き込んでいる。

 千葉さんが作ってくれたみがきニシンとミョウガのみそあえも、ニシンのうまみとミョウガの香味をみそがまとめ上げていておいしい。

 それから4日後、自宅でも作ってみようと思い立ち、青森駅前の複合ビル「アウガ」地下の「新鮮市場」にみがきニシンを買いに行った。名前を呼ばれて振り返ると、全くの偶然だが買い物に来ていた千葉さんがいた。一緒に見て歩くと、「この丸々と太ったのは青森の人が大好きなホッケ」「カレイは野菜と一緒に煮るとおいしい」……。

 説明を聞きながら見て回ると、青森の食文化の豊かさと奥深さが一層伝わってきた。

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