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中国にチャンスの場求める日本人板前 本格懐石の料理人引く手あまた「日本より給与高い」 - 東京新聞

<日中国交50年の現在地 ①>

中国・上海の「上海タワー」104階にある日本料理店で7月、取材にこたえる料理長、細田紀明さん

中国・上海の「上海タワー」104階にある日本料理店で7月、取材にこたえる料理長、細田紀明さん

 上海随一の観光エリア・外灘(バンド)を見下ろす高さ632メートル、127階建ての上海タワー。その104階の日本料理店「錦上田舎懐石料理」では料理長、細田紀明さん(45)が、中国の富裕層が大半という来店客をもてなす。景色だけでなく、夜のコースは約3万〜6万円と値段も極上だ。

 細田さんは本格的な懐石のエッセンスにこだわる。「中国では刺し身を分厚く切らないと怒られることもあるが、薄く切る日本のスタイルを通している」。一方、交流サイト(SNS)好きな中国人の心をくすぐるため、見栄えのする盛り付けを研究するなど試行錯誤も欠かさない。

◆経済で日本追い越し「本格的な和食」に需要

9月、北京の日本料理店。中国では日本の居酒屋を模した店も少なくない

9月、北京の日本料理店。中国では日本の居酒屋を模した店も少なくない

 細田さんは島根で祖母の手伝いをしながら料理を覚え、18歳で大阪・ミナミの日本料理店に就職。親方の紹介で老舗・なだ万に転職した。そのなだ万が上海に進出した2005年、副料理長として派遣された。

 上海のなだ万には6年勤めて帰国した。しかし思い切って退職し、再び上海に向かった。「大阪や東京にはつてがなく、地元に戻っても腕を振るえない。勢いのある上海にチャンスがあった」。中国人実業家に誘われて上海の裏町で約10年間日本料理店を切り盛りした。20年末、開業を控えていた高級ホテルの日本料理店から声がかかった。

 「世界中の有名店が出店してはすぐに撤退する」というほど流行の変化が激しい上海。だが細田さんは板前として脂の乗る時期を厳しい舞台にかける。

 かつて日本料理は庶民の手の届かない高級料理だった。細田さんが変化を感じたのは、中国が経済規模で日本を追い越した10年ころだ。「日本に旅行しておいしいものを食べて帰ってくる中国人が増えた。同時に本格的な和食を求めるようになった」

◆料理は独自進化、客単価は10年で10倍超に

中国・上海の「上海タワー」104階にある日本料理店の店内

中国・上海の「上海タワー」104階にある日本料理店の店内

 さらにさかのぼり、民主化運動が弾圧された天安門事件直後の1989年に北京にきた日本料理店経営の小林金二さん(66)は「当時、北京には8軒しか日本料理店がなかった。調達できないマヨネーズやソースは材料から手作りした」と振り返る。うどん定食の値段が「日系企業の中国人スタッフの月給の3割くらいだった」と記憶している。

 それから30年。中国の国内総生産(GDP)は日本の4倍近い。中国日本商会の白書によると、日本料理店は19年には約6万5000店。17年から2万4000店も増えた。来店客は中国人が中心となり、日本料理は独自の進化を遂げる。見よう見まねですしを握る中国人が増え、大トロにウニやキャビアを乗せてだす高級店もある。「日本にある『天津飯』が中国に存在しないのと同様、改良版日本料理が主導的な地位を占めている」(中国誌)

北京市内で8月、「安い店ほど競争が激しい」と話し、本格的な日本料理を営む中国人の万さん

北京市内で8月、「安い店ほど競争が激しい」と話し、本格的な日本料理を営む中国人の万さん

 北京で日本料理店を経営する万さん(52)によると、この10年間で客単価は10倍以上になった。本格懐石など高級な日本料理は日本人の手に届かなくなった一方、細田さんのような料理人は引く手あまただ。万さんは「高い技術を持った日本人の料理人がほしい。板前の給与は日本より高い」と話す。(北京・白山泉、写真も)

 ◇  ◇

 29日で国交正常化から50年となる日本と中国。友好と対立の間で揺れながらも、無数の人々が両国をまたにかけて生きてきた。そうした人々の姿を通じ、日中の現在地を伝える。

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