Search

<ふるさとごはん 埼玉に暮らす世界の人々>(3)風俗街が変貌 活気戻る 中国料理(西川口):東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

故郷の中国東北部の鉄鍋料理を見せる店長の興さん=川口市の滕記鉄鍋炖で

故郷の中国東北部の鉄鍋料理を見せる店長の興さん=川口市の滕記鉄鍋炖で

 歓楽街として知られた埼玉・JR西川口駅の西口。今もネオン看板がきらめくが、よく見ると全て漢字で、読み方が分からない。それもそのはず、風俗店の集まる街から近年は中華街へと変貌を遂げたのだという。しかも中国全土の料理を出す中国人向けの店ばかり。「新時代のチャイナタウン」「現地感がハンパない」と、日本人にも注目を集める街を探検してみた。

 駅前の通りに出てすぐ、聞こえてくる会話が中国語になった。目についた中華料理店に入ってみた。女性店員が「ニーハオ」と笑顔で声を掛けてくる。こちらが「こんにちは」と返すと、少し緊張した表情になり、別の男性店員を呼んできた。彼は片言の日本語が話せるようだ。店のおすすめを聞くと「豚カツ」とのこと。中国にも豚カツが…? 注文すると、出てきたのは角煮に似た料理。「これ豚カツ?」。何度も確認するが、店員は笑顔でうなずく。見た目通りに角煮の味がして、うまい。ただ骨が大きく、少し食べにくい。あれ、なんか骨が多いな。二本目で気づいた。これ、足の形だ。メニューを見ると、自分にも読める漢字で書いてあった。「豚足」。

中華料理店の漢字のネオンが輝く西川口の一角

中華料理店の漢字のネオンが輝く西川口の一角

 日本語メニューがない店も多い。漢字と写真から想像して頼むのも、店員におすすめを聞くのも楽しい。注意点はクレジットカードが使えない店が多く、一品の量が多いことか。

 川口市には二万二千人を超える中国人が住み、全国の市区町村で最多とする統計もある。市の担当者は「市内の芝園団地がきっかけで増えた」とみる。一九七八年に芝園町にできた約二千五百戸の団地は、子育てを終えた世帯の転出や老朽化などで二〇〇〇年ごろに空室が増えた。そこへ不動産を借りにくかった外国人、特に中国人が入居。今では入居者の半数以上が外国人だ。

 一方、西川口駅の西口周辺では約十五年前に県警が大規模な摘発を実施し、二百店を超えるといわれた風俗店が激減。飲食店も閉店した。地域の中国人人口が増える中、空き店舗を埋めたのが中国人向けの店だった。

 駅近くにある中華料理店「滕記鉄鍋炖(とうきてつなべどん)」もそのひとつ。店長の興艶萍(こうえんへい)さん(46)は、中国東北部の黒竜江省出身で、夫と十五年前に来日した。地域に東北部出身者が多いことに目をつけ、六年前に「東北部の人向けに故郷の味を」と店を開いた。

 看板メニューの「東北農家鍋」を食べてみた。脂をひいた鉄鍋に、豚肉とジャガイモ、豆や野菜を豪快に放り込むと、盛大に湯気が上がった。醤油(しょうゆ)と豚骨スープを入れ、数分煮たら出来上がり。日本人の舌にも合う風味で、肉じゃがのような懐かしい味がする。今では客の三割が日本人になり、急いで日本語のメニューも用意したという。興さんは「ここは病院や役所でも中国語が通じるので住みやすい」と話す。

 西川口駅前で老舗そば屋「二幸」を営む小久保亮治さん(54)は「個人的には商店街に活気が戻ってうれしい」と話す。店のある通りの店舗も半数近くが中国系だ。小久保さんはこう話してくれた。「ごみの出し方など文化の違いもあるが、言えばわかってくれる。街はつくるものじゃなくてできるもの。風俗街の次は中華街と、自然に注目を集めるのが西川口らしさだと思う」(飯塚大輝)

<中国東北部> 中華人民共和国の遼寧省、吉林省、黒竜江省を指す。東北3省の主要都市は瀋陽、長春、ハルビン。日本が「満州」と称したのは、これに内モンゴル自治地区東部を加えた範囲。外国籍の住民が多い川口市では、中国語などが話せる国際交流員や相談員を計10人配置。市役所で窓口を毎週開いて外国語で行政手続きを受け付けるほか、市立病院に通訳の派遣もしている。私立病院でも通訳スタッフを置くところがある。


関連キーワード



おすすめ情報

Adblock test (Why?)



from "料理" - Google ニュース https://ift.tt/GACcR9J
via IFTTT

Bagikan Berita Ini

0 Response to "<ふるさとごはん 埼玉に暮らす世界の人々>(3)風俗街が変貌 活気戻る 中国料理(西川口):東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞"

Post a Comment

Powered by Blogger.